8年以上続くシリアの内戦は、終結の兆しが見えない。混乱に乗じて過激派が再び根を下ろし、テロを世界に拡散させる恐れがある。関係国は、危機感を共有せねばならない。

 過激派組織「イスラム国」対策を話し合う有志連合の外相級会合がワシントンで開かれた。

 「イスラム国」は、シリアとイラクの拠点を失い、10月には指導者のバグダーディ容疑者が米軍の作戦で死亡した。だが、リビアなどで勢力を維持し、インターネットでの宣伝も続けている。脅威が消えたわけではない。

 イスラム教に名を借りた過激思想に欧米の若者が取り込まれ、シリアなどで軍事訓練を受けた。こうした外国人戦闘員と協力者による大規模テロが一時期、フランスやベルギーで多発した。同様の事態を繰り返させてはならない。

 当面の課題は、トルコやシリアで拘束中の外国人戦闘員と家族の扱いだ。約1200人を拘束するトルコは、出身国への送還を始めた。3〜4割が欧州出身とされる。米国も、出身国が受け入れるべきだとの考えを示している。

 一方、欧州諸国は、受け入れには消極的だ。「戦闘員が犯罪を犯した場所で、現地の法律に基づいて裁かれるべきだ」という考えが強い。英国は自国出身の一部の戦闘員の国籍を剥奪(はくだつ)した。

 戦闘員を送り返された国は自国の法律に従って訴追、処罰することになる。テロ関与などで有罪を導く証拠を集めるのは容易ではない。まして、訓練を受けていただけで拘束された人物を、西欧の法体系で裁くのは極めて困難だ。

 有罪が立証されず、釈放された戦闘員が、自国でテロ行為に手を染める。そうした危険に対する欧州諸国の懸念は理解できる。

 欧州側は、トルコのシリアへの越境攻撃などを批判し、制裁を準備している。トルコの強硬姿勢は制裁を発動させないための牽制(けんせい)だろう。送還する以上、相手国政府に対し、公判維持に必要な資料を提供すべきではないか。

 トルコのエルドアン大統領は、ロシアと手を結び、シリア情勢の主導権を握ろうとしている。米軍がシリア北部から撤収して生まれた空白を、ロシアとトルコが埋めているのが現実だ。

 トランプ米大統領がエルドアン氏と会談し、親交を誇示したのには疑問が残る。北大西洋条約機構(NATO)の同盟国でありながら、ロシアとの関係を深めるトルコにどう対処するのか。明確な戦略の構築が求められる。